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早川典雄のロジの素

第8回 「人材・人手不足」と戦う(1)

物流現場の人手不足は、20年続く

いま、流通・物流のサービス産業を中心に人手不足が深刻な局面を迎えています。しかし、この急な人手不足は、一時的なものではなく、消費人口が本格的な減少を迎える20年後まで続きます。

1.人手不足の本質

消費人口に比べて、労働人口が大きく減る

人口の減少や少子・高齢化による影響については、楽観・悲観の両方の見方があります。詳しくは他書に譲りますが、いま、働き手がじわじわ減っていることに注目する必要があります。

働き手である生産人口(15~64歳)は、実に年間100万人以上減少しているのです(図表1)。「生産人口の減少」と「景気の持ち直しによる仕事増」の重なりは、働き手のキャパシティの限界を超え、急激な人手不足を招いている現状があります。しかし、この人手不足は、一過性のものではなく、長期に渡る構造的な現象です。その本質は、「消費人口の減り方に比べて、生産人口の減り方が大きい」ことにあります。

人は、職場からいつか退きますが、その後の人生は長く、消費は続きます。したがって、「シニア消費」が縮小し、本格的な消費人口の減少を迎える20年後まで人手不足は続くとの見方を示すエコノミストもいます。その意味では、「急な、あるいは、一過性の人手不足」ではなく、「本格的な人手不足」の時代の到来と見るべきです。

図表1 人口構成の推移 人口構成推移

2.物流業を直撃する生産人口の減少

物流業における労働需給のギャップが拡大する

人口の減少は、生活者や企業が将来に渡って経済的な負担を受け、それが持続するのではないかという懸念を抱く要因になっています。では、人手不足は物流にどのようなインパクトを与えるのでしょうか。

物流業には、つぎのような特徴があります。

  • 他産業に比べ、長時間労働で低賃金という一面を持つ
    (全産業平均賃金の推移と道路貨物運送業賃金の推移による)
  • 陸上、海上分野ともに高齢化が進んでいる
    (トラック運転者年齢の推移、年齢別船員数の推移による)
  • 中小零細事業者が多く、新しい労働環境への対応が心配される
    (ITの導入進展、物流サービスの多様化による)

物流は、輸送、保管、荷役、包装、流通加工、情報の6機能から成り立っています。この6つの機能のうち情報を除く5つの機能は、労働集約型の活動があってはじめて発揮されるものです。したがって、生産人口の減少は、労働需給のギャップを拡大させます(図表2)。

図表2 物流分野の労働需給の予測 労働需給予測

労働者が高齢化している中、物流の高度化・情報化がますます進展することを考えると「質の高い労働力」の確保の必要性が高まるものと考えられます。

物流業界が持続的に成長するためには、生産人口減少にどのように対応していくかが重要です。

○生産人口減少への対応例
  • 在庫の最適化
  • 小口・多頻度物流の是正、商習慣の見直し
  • 実車率(積載効率・運行効率)の向上
  • リアルタイム業務(業務の高サイクル化)
  • 情報技術の積極導入
  • 自家輸送の委託輸送への転換
  • 車両の大型化、モーダルシフトの再評価・促進
  • 省力機器の導入、ユニットロード化
  • 自動認識技術適用の促進
  • モーダルシフトによる環境負荷軽減
  • 物流CSR評価(物流企業評価制度)
  • 物流活動への女性登用、活用
  • 外国人労働者の受け入れ
  • ロジスティクス人材養成プログラムの充実

また、物流業界に留まらず、他の産業界でも「物流」に魅力を感じ、物流が職業として選択されるようにすることが、いま以上に重要になります。

今回は、物流現場における人材・人手不足が続くことについて述べました。次回以降では、その対応法を詳細に考えていきます。