トップメッセージ

代表取締役社長 田口義隆

日本の企業間物流を「共創」で変革します

 セイノーグループは創業者である田口利八が「輸送立国」を掲げて設立した会社です。田口利八名誉会長の「物流を通じて国家社会に貢献しよう」という姿勢は、長い歴史の中でDNAとして社内に広く浸透しています。私自身も、企業間物流を担う企業の経営者として、企業価値と社会価値を共に高めることが自分の使命であるという想いを持ち続けています。一方で、価値を高めていく方法については、時代に応じて臨機応変に変えていくべきとも認識しています。今、物流業界はこれまでにない転換期を迎えていることを強く感じています。人口減少と高齢化によるドライバー不足、環境負荷低減への社会的要請の高まりなど、構造的な課題が顕在化しているからです。従来のように自社ネットワークを囲い込み、競争で勝ち残る発想だけでは、もはや社会の要請にも経済合理性にも応えられません。だからこそ、たとえ困難であっても、新しい挑戦を通じて企業価値と社会価値を共に高めていくことが重要だと考えています。

 私たちは、この課題に対して、受け身で対応するのではなく、強い意志を持って、企業の垣根を越えて物流効率化と環境負荷低減を両立する「Team Green Logistics」という構想を掲げました。この取り組みは、単に業界の課題解決にとどまらず、お客様のサプライチェーンの強靱化、ひいては日本経済全体の競争力強化にも資するものであり、その結果として、当社の企業価値も向上すると確信しています。

「O.P.P.」と「On Behalf」を進めます

 私たちが描く未来の物流は、これまでの「競争モデル」から「共創モデル」への転換です。日本の企業間物流業界は、各社がそれぞれ独自の配送網を持ち、同じ地域を複数のトラックが走るという非効率な構造が長く続いてきました。その結果、貨物自動車の積載効率は平均40%程度と低く、各社の収益性・資産効率の改善、CO2排出量の削減も進みませんでした。この構造を変えるためには、企業の垣根を越えて、物流資産、輸送データを共有し、ネットワークを最適化する必要があります。当社は、4つの取り組みを進めています。

 まず、「O.P.P.(オープン・パブリック・プラットフォーム)」です。「O.P.P.」は、企業や業界の垣根を越えて連携し、共創によって物流ネットワーク全体を最適化することを目指す、業界横断型の取り組みです。労働生産性や積載効率の向上といった成果が期待されます。この考えを具体化する取り組みの一つがハコベルの手掛ける荷主とドライバーをマッチングするプラットフォームです。これにより中小貸切事業者を中心とした約2万社、6万台の運送パートナーの積載効率向上に貢献しています。また特積み輸送でも専門チームが同業他社へ積極的にお声掛けすることにより共同輸配送も進んでいます。

 一歩踏み込んだ共創として、資本提携の動きも進めています。当社は、2024年度に三菱電機様の物流会社(現MDロジス)に資本を投入しグループに招きました。三菱電機様は当社のお客様でもあり、お客様との共創を深めるという面もあります。またハコベルに日本ロジテム様や福山通運様、山九様などに資本参加していただいたのも業界横断の取り組みが前進している事例です。

 さらに当社は、お客様への価値提供も進化させます。「On Behalf(成り代わり)」という考え方の下、お客様に成り代わって在庫管理、配送業務、資金回収などの業務を担う取り組みを進めています。お客様の固定費を変動費に変えることで、本業への経営資源の集中に貢献します。より提供の幅を拡げることで、将来の大きな事業にすべく、取り組みを強化しています。

 最後に、テクノロジーと起業家精神を持ったベンチャー企業との共創です。ハコベルは、デジタル活用に優れたラクスル様が生み、事業基盤の強い当社が育てた会社です。また当社は業界の中では最も早くCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)に注力しており、過疎化が進む地域でのドローンの活用をはじめ、スタートアップとの共創も進めています。このように、私たちは、単独企業の枠を越えた価値創造を目指しています。これは業界構造を変革する挑戦であり、ひいては日本全体の産業競争力の底上げに寄与するものだと確信しています。

「ロードマップ2028」の取り組みを加速します

 この変革を確実に企業価値につなげるためにも、私たちは2023年に「ロードマップ2028」を策定しました。お客様重視の経営を進めている中で、低い収益性・資本効率から抜け出せずに、株式市場からは、PBR約0.4倍という厳しい評価を受けていました。私たちは、この評価に真剣に向き合い、事業ごとの課題を直視し、資本政策を含めてあらゆる施策を再検討し、ROE8.0%以上、PBR1倍超の早期達成という目標を掲げました。まだ、折り返し地点ですが、時価総額は116%上昇、PBRは一時ほぼ1.0倍まで上昇しました。しかしながら25.3期末時点のPBRは0.8倍、ROEは4.7%など、まだ実現できていないことも多く、取り組みを加速する必要があります。成果が見え始めていることは、適正運賃の収受、M&Aの推進、自己株式取得やDOE4%の株主還元策、投資家・アナリストとの対話、従業員のワークエンゲージメントの向上などです。一方、課題としては、収益性のさらなる改善、ロジスティクス・貸切事業の成長、資産効率の改善などであると認識しています。

企業文化を磨き続けます

 セイノーグループには、創業以来一貫して受け継がれてきた「現場主義」という企業文化があります。お客様を知り、輸送の現場を知るために、中核事業である西濃運輸では、幹部候補生が約1年間、トラックを運転し、集荷・配送業務を実体験する研修制度を設けています。ここまでの現場主義の徹底は、当社規模の上場企業ではまれと考えています。

 輸送事業の現場ではチームワークが大切なので、野球部をはじめとした運動部やコミュニティ活動を会社として支援しています。うれしいことに、2025年も都市対抗野球の全国大会に進出しました。全社一丸となって仲間を応援することは、日々の業務における連携やチームワークの強化、従業員の一体感の醸成にもつながり、強い組織づくりの一助となっています。

 こうした取り組みに加えて、2024年には会社の憲法ともいうべき定款に「企業理念の実践」を加えました。当社の企業理念の一貫した実践、それを可能にしている企業文化が当社の価値創造の源泉であると考えたからです。日本ではエーザイ様や丸井グループ様など、まだ数社しか実行していない取り組みですが、株主の皆さまの賛同を頂けたため、全力で実践することをお約束します。

経営に外部視点を活かします

 独自の企業文化を磨くと同時に、常に世界の潮流に目を向け、広く「衆智」を集め、自分たちのやり方を見直し続けることも重要だと考えています。私自身、2003年に西濃運輸の社長に就任以来、お客様の繁栄を中心軸に、経営理念である「会社を発展させ、従業員を幸福にする」考えの下、その結果指標である売上高、利益を上げることに集中してきました。先進的な経営を推進している丸井グループ様の社外取締役の経験や様々な知見を持つ方々との対話の中で、上場企業の経営者として、投資家との対話や資本効率の考え方が十分でないことに気が付き、軌道修正をしました。それが、「ロードマップ2028」です。おかげさまで、外部のステークホルダーとの対話の質・量は大きく向上できたため、さらに経営に活かしていきたいと考えています。従業員の経済的な幸せと株主への還元は両立することも再認識できたことから、継続して従業員持株会の促進にも取り組んでいきます。

 また2024年に「監査役会設置会社」から「監査等委員会設置会社」に移行し、迅速な意思決定を可能にしました。新たに社外取締役にトヨタ自動車代表取締役副社長の経験を持つ伊地知隆彦氏、スタートアップ支援やベンチャー投資の経験を持つ佐藤真希子氏などを迎え、取締役会の多様性も強化しました。さらに、2023年にアドバイザリーボードも大きく変革しました。コーポレートガバナンス、経営戦略、サステナビリティなどの実務家を招き、毎月、テーマを決めて私と事業責任者、次世代経営者たちを交えて、活発な意見交換をしています。組織の強靱化のために変えるべきことは、経営者として私が責任を持って、すぐに変えていくサイクルを回し始めました。

すべてのステークホルダーと共に持続可能な未来を実現します

 長期投資家・インパクト投資家であるコモンズ投信様などとの対話を通じて、企業価値創造の道筋の見える化、特に、財務・非財務の両面から進捗の数値化の必要性にも気が付きました。GHG排出削減量、積載効率向上、従業員の定着率・エンゲージメントなどの非財務指標を経済価値と社会価値の統合的なマネジメントの中核に位置付け、実行・検証・対話のサイクルをスタートしました。まだ取り組みは初期段階ですが、皆さまからのフィードバックを頂きながら、改善していきたいと思います。

 私は、経営者として、確信していることがあります。それは、企業は単に利益を追求する存在ではなく、社会と共に価値を創造し続ける存在でなければならないということです。お客様、従業員とその家族、取引先や協業先、株主、社会、そして環境。すべてのステークホルダーに対して、信頼と価値を生み出し、それぞれの持続的な発展に貢献していくことこそが、企業が長期的に成長していくための本質的な道だと私は信じています。Team Green Logisticsを通じて、単なる「モノを運ぶ会社」から、物流を基盤に多様な価値を組み合わせ、お客様の成長と社会課題解決を同時に実現する「物流を核とした価値創造企業」へと、さらなる進化を遂げます。これは単なる経営戦略ではなく、次世代に向けた責任であり、物流という社会インフラを担う企業としての使命です。私たちはこれからも、「運ぶ」その先の価値を問い続け、社会と共に成長してまいります。

セイノーホールディングス株式会社
代表取締役社長

田口 義隆